SaraFluor™ Structural Imaging Series

SaraFluor™ 488B, 650B

[超解像イメージング用蛍光色素]

495-540 nm:緑色

650-750 nm:深赤色

一般的な光学顕微鏡(蛍光顕微鏡)の分解能は波長の約半分(200-400 nm)が理論的な限界です。この限界を超える手法として、「超解像蛍光顕微鏡法」がいくつも開発されてきています。その一つとして、1分子局在化法 (single molecule localization microscopy,  SMLM) が広く使われています。SaraFluor B シリーズはこの SMLM 専用に開発された、生理的条件下で自発的点滅を示す蛍光色素です。

SaraFluor 488B (SF488B, HEtetTFER) は青色レーザー励起によって緑の蛍光を示す色素です。SaraFluor 650B** (SF650B, HMSiR) は赤色レーザー励起によって深赤色の蛍光を示します。抗体など目的のタンパク質やその他の高分子を NHS またはマレイミド基を介して標識することができます。

* SaraFluor はアイヌ語で「見えるようになる」「明るく開けた葦原」などの意味の sara という言葉に由来する造語です。自発的点滅を示す色素は、SaraFluor シリーズの中でも B をつけて区別されています。
** これらの製品はかつて HMSiR-NHS または HMSiR-maleimide という製品名で販売してきたものと同一です。

価格

型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
A208-01 SaraFluor™ 650B-NHS 100 μg ¥ 54,800
A209-01 SaraFluor™ 650B-maleimide 100 μg ¥ 54,800
A218-01 SaraFluor™ 488B-NHS 100 μg ¥ 49,800

各種ダウンロード

  • A208 SaraFluor650B-NHS プロトコル

  • A209 SaraFluor650B-maleimide プロトコル

  • A218 SaraFluor488B-NHS プロトコル

  • チラシ

  • A208 SDS

  • A209 SDS

  • A218 SDS

  • 製品情報

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    SaraFluor B シリーズの物性

    製品名
    Absmax (nm) FLmax (nm) ε Φ
    SaraFluor 488B (HEtetTFER) 507 530 80,000 0.76
    SaraFluor 650B (HMSiR) 654 669 100,000 0.39

    SaraFluor B の点滅特性

    PBS (pH 7.4) 中での SaraFluor B の自発的点滅。647 nm レーザー励起(SaraFluor 650B, HMSiR)または 488 nm レーザー励起(SaraFluor 488B, HEtetTFER)の全反射照明で、1分子相当の領域の蛍光輝度を解析したもの。両者の光学条件が異なるため、縦軸は直接比較できません。

     

    SaraFluor B シリーズのスペクトル

     

     

     

     

  • SaraFluor 488B イメージング例

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    SaraFluor 488B-NHS イメージング例

    A549 細胞を固定し、抗α-チューブリン抗体 (DM1A 1/4000 dilution) および SaraFluor 488B 標識2次抗体で染色した細胞の蛍光像 (Conventional) および SMLM 像。北大ニコンイメージングセンターにて NIKON Ti, NIKON Apo TIRF100x (NA1.49) および ImagEM (浜松ホトニクス) を用いて 488 nm レーザー励起による全反射蛍光像を撮影した。 SMLM 像は ImageJ および ThunderSTORM を用いて画像処理したもの。

     

  • SaraFluor 650B 標識抗体 イメージング例

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    SaraFluor 650B 標識抗体 イメージング例

    HeLa 細胞仮足の拡大像。細胞を固定し、抗αチューブリン抗体 (DM1A, 1/4000 希釈) および SaraFluor 650B (HMSiR) 標識2次抗体 (A202-01, 30 μg/mL) で染色した。ニコン超解像顕微鏡システム (N-STORM) で647 nm レーザー励起し、NIKON Apo TIRF 100x (NA1.49) を用いて撮影した25,000 枚の画像の平均像 (Conventional, 通常の蛍光画像に相当する) と 1,000 枚および 25,000 枚の画像を ImageJ/ThunderSTORM で解析して得た超解像画像 (single molecule localization microscopy, SMLM) 。

     

  • SaraFluor B シリーズを用いた 3D-STORM による微小管の3次元イメージング

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    3D-STORM による微小管の3次元イメージング

    SaraFluor B は生理的な溶液条件下で自発的に明滅する蛍光プローブです。これまでの dSTORM 観察の際に必要とされてきたチオールや脱酸素剤の添加の必要がなく、弱い励起光照射での観測が可能です。SaraFluor B で標識された試料を、ニコン超解像顕微鏡 N-STORM に搭載されているシリンドリカルレンズを用いて撮影・解析することにより、対物レンズの焦点を上下させることなく、3次元蛍光画像を得ることができます。

     

    SaraFluor B標識 Goat anti-mouse IgG (whole)により染色された 固定HeLa細胞内の微小管構造

    シリンドリカルレンズを通した蛍光像を撮影・解析することにより、光軸(Z軸)方向の位置を約 50 nm の精度で抽出。平面の位置情報と組み合わせることで、3D 蛍光画像を再構築した。東京大学医科学研究所 顕微鏡コアラボラトリーにおいて撮影。

    プロトコル

    1. ガラスボトムディッシュ上に培養したHeLa細胞を 3% パラホルムアルデヒドで、37℃で 20分間固定。
    2. PBS で洗浄
    3. 冷メタノールで-20℃、5分間浸透処理
    4. 5% BSA 含有 PBS 中で 30 分間インキュベートし、ブロッキング。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄。
    5. 1次抗体で染色。マウス由来抗チューブリン抗体(Purified anti-Tubulin-α Antibody (625901), BioLegend)を PBSにて 10 μg/mL に希釈し、ガラスボトムディッシュ上の固定細胞に滴下し、室温で約 2 時間反応させました。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄しました。
    6. SaraFluor 650B goat anti-mouse IgG を PBSにて10 μg/mL に希釈し、ガラスボトムディッシュ上の固定細胞に滴下し、室温、暗所にて約 2 時間反応させました。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄しました。
    7. NIKON N-STORM 顕微鏡で、観察しました。励起光源は 647  nm レーザーを 100 W/cm2 で使用。カメラ前のシリンドリカルレンズを挿入し、顕微鏡のマニュアルに従って画像を取得し、3D-STORM 解析を行いました。
  • フレーム数および解析ソフトウェアによる SaraFluor B シリーズの超解像イメージの差

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    フレーム数および解析ソフトウェアによる超解像イメージの差

    SaraFluor B シリーズは生理的 pH の溶液中で自発的な点滅を示す蛍光色素です。PALM/STORM 用の顕微鏡システムを使わずとも、1分子蛍光が観察できる顕微鏡を用いて多数の画像を取得すれば、ImageJ プラグイン等のソフトウェアで解析することで超解像イメージを簡単に得ることができます。

    ImageJ プラグインとして ThunderSTORM が広く使われていますが、NanoJ SRRF という異なる原理に基づく超解像イメージング用プラグインでも、TRM モードで SaraFluor B シリーズの点滅する蛍光色素像から超解像イメージを作成可能です。ここでは異なる画像枚数および異なるソフトウェアによる画像解析結果を定性的に比較しました。

    固定した HeLa 細胞を αチューブリン抗体 (DM1A, 1/4000) (1次抗体)および SaraFluor™ 650B goat anti-mouse IgG (A202-01, 30 μg/mL) (2次抗体)で染色し、NIKON N-STORM システムを用いて 647 nm レーザーによる全反射照明を 100x Apo TIRF NA 1.49 でイメージングしました。露光時間は30 msec/frame。画像は各ソフトウェアで解析を行いました。

    このとき、ThunderSTORM では 1,000 枚程度では可視化されない微小管もある一方、10,000 枚程度の画像があると充分に可視化されました。 NanoJ SRRF (TRM) は画像枚数が少ないときでも情報がより多い様子が見られました。また ThunderSTORM は高いコントラストが得られた一方、NanoJ SRRF では画像枚数が多くてもコントラストや解像度が高くならない傾向が観察されました。

     

    参考文献

    M. Ovesný, P. Křížek, J. Borkovec, Z. Švindrych, G. M. Hagen. (2014) Bioinformatics 30:2389-2390 DOI: 10.1093/bioinformatics/btu202 (ThunderSTORM)

    Nils Gustafsson, Siân Culley, George Ashdown, Dylan M. Owen, Pedro Matos Pereira, & Ricardo Henriques (2016) Nature Communications 7: 12471  DOI: 10.1038/ncomms12471 (NanoJ SRRF)

     

    謝辞

    撮影および画像解析について、北大ニコンイメージングセンターの小林健太郎様および堤元佐先生にご教示をいただきました。感謝いたします。

     

よくあるご質問

  • Q SaraFluor 650B-NHS が DMSO に溶けません。どうしたら良いですか?
    A

    SaraFluor 650B-NHS および SaraFluor 488B-NHS は 水やDMSO にやや溶けにくいため、プロトコルに従ってしっかりピペッティングして溶かし、そのまま標識してください。DMSO や水溶液中でわずかに濁った状態になることがありますが、そのまま標識可能です。試薬単体では分子同士が会合し、測定すると蛍光強度が弱い場合がありますが、プロトコル通りに標識した後は標識対象のタンパク質の効果で溶解性が良好となり、高い蛍光強度を示すようになります。

     

  • Q 0.1 M sodium bicarbonate buffer の作り方を教えてください。またこのバッファーを使う理由は?
    A

    炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) を 0.1 M になるように純水に溶解してください。およそ pH 8.0から8.4 程度になるはずですのでそのままお使いください。pH が外れている場合は、Na2CO3 や HCl などで微調整していただいても構いません。

    NHS エステルと1級アミンの反応は pH 8.0から 8.6 付近で効率よく進行します。そのため、Tris buffer などのアミノ基を含むバッファー以外であれば、HEPES, リン酸バッファー、ホウ酸バッファーなども同様に使用可能です。

  • Q タンパク質の 280 nm での分子吸光係数はどのように調べたらよいですか?
    A

    タンパク質の 280 nm での吸光度は、Gill and von Hippel (1989) Analytical Biochemistry, 182: 319-326 や Anthis and Clore (2013) Protein Science 22:851-858 などの方法で求めることができます。以下のような Web サイトでも計算サービスが提供されているようですが、ご利用にあたってはそれぞれのサイトの利用条件などの説明に従ってください。

    http://protcalc.sourceforge.net/
    http://web.expasy.org/protparam/
    http://nickanthis.com/tools/a205.html

  • Q NHS 体を使い効率よく標識する方法を教えてください
    A

    標識する抗体等、タンパク質はできるだけ精製されたものを使用してください。未精製のタンパク質に標識したい場合は、アフィニティカラム、限外ろ過やゲルろ過などで夾雑物を除いた後に標識を行うと効率が上がります。また、トリスバッファーはアミノ基を含むため、このバッファー中での NHS による標識は行うことができません。脱塩カラム、ゲルろ過カラム、透析などでトリスバッファーをリン酸緩衝液または Good buffer (PIPES, HEPES 等) などアミノ基を含まないバッファーに置換した上での標識が必要です。

    また、タンパク質や条件によっても異なりますが、 37℃ で 30分から 1 時間反応させるよりも、4℃ で一晩反応させるほうが標識率が上がることが多くあります。

  • Q Q&A を見ても問題が解決しません
    A

    蛍光色素一般に関する Q&A も参照してください

参考文献

R. Chowdhury, A. Sau S. M. Musser (2022)
Nat. Cell. Biol. 24: pages112–122 DOI: 10.1038/s41556-021-00815-6   (SF650B)

A. Morozumi, M. Kamiya, Y. Urano (2020)
Neuromethods 154: 203-227 DOI: 10.1007/978-1-0716-0532-5_10  (SF488B, SF650B, Halo-SF650B)
こちらの文献には、本製品を使用した実験方法が詳細に記載されております。

S. Uno, M. Kamiya, A. Morozumi, Y. Urano (2018)
Chem. Commun. 54:102-105 DOI: 10.1039/c7cc07783a  (SF488B, SF650B)

F-C. Chien, C-Y, Linb, G. Abrigo (2018)
Phys. Chem. Chem. Phys. 20:27245-27255 DOI:10.1039/C8CP02942C (SF650B)

M. Ovesný, P. Křížek, J. Borkovec, Z. Švindrych, G. M. Hagen. (2014)
Bioinformatics 30:2389-2390 DOI: 10.1093/bioinformatics/btu202 (ThunderSTORM)

S. Uno, M. Kamiya, T. Yoshihara, K. Sugawara, K. Okabe, M. C. Tarhan, H. Fujita, T. Funatsu, Y. Okada, S. Tobita, Y. Urano (2014)
Nat. Chem. 6:681-689 DOI: 10.1038/NCHEM.2002 (SF650B)

※論文では SaraFluor 488B と SaraFluor 650B はそれぞれ、HEtetTFER と HMSiR と記載されている場合があります。