フレーム数および解析ソフトウェアによる超解像イメージの差
SaraFluor B シリーズは生理的 pH の溶液中で自発的な点滅を示す蛍光色素です。PALM/STORM 用の顕微鏡システムを使わずとも、1分子蛍光が観察できる顕微鏡を用いて多数の画像を取得すれば、ImageJ プラグイン等のソフトウェアで解析することで超解像イメージを簡単に得ることができます。
ImageJ プラグインとして ThunderSTORM が広く使われていますが、NanoJ SRRF という異なる原理に基づく超解像イメージング用プラグインでも、TRM モードで SaraFluor B シリーズの点滅する蛍光色素像から超解像イメージを作成可能です。ここでは異なる画像枚数および異なるソフトウェアによる画像解析結果を定性的に比較しました。
固定した HeLa 細胞を αチューブリン抗体 (DM1A, 1/4000) (1次抗体)および SaraFluor™ 650B goat anti-mouse IgG (A202-01, 30 μg/mL) (2次抗体)で染色し、NIKON N-STORM システムを用いて 647 nm レーザーによる全反射照明を 100x Apo TIRF NA 1.49 でイメージングしました。露光時間は30 msec/frame。画像は各ソフトウェアで解析を行いました。
このとき、ThunderSTORM では 1,000 枚程度では可視化されない微小管もある一方、10,000 枚程度の画像があると充分に可視化されました。 NanoJ SRRF (TRM) は画像枚数が少ないときでも情報がより多い様子が見られました。また ThunderSTORM は高いコントラストが得られた一方、NanoJ SRRF では画像枚数が多くてもコントラストや解像度が高くならない傾向が観察されました。
参考文献
M. Ovesný, P. Křížek, J. Borkovec, Z. Švindrych, G. M. Hagen. (2014) Bioinformatics 30:2389-2390 DOI: 10.1093/bioinformatics/btu202 (ThunderSTORM)
Nils Gustafsson, Siân Culley, George Ashdown, Dylan M. Owen, Pedro Matos Pereira, & Ricardo Henriques (2016) Nature Communications 7: 12471 DOI: 10.1038/ncomms12471 (NanoJ SRRF)
謝辞
撮影および画像解析について、北大ニコンイメージングセンターの小林健太郎様および堤元佐先生にご教示をいただきました。感謝いたします。