HaloFluor™ Series SaraFluor™ Structural Imaging Series

HaloTag® SaraFluor™ 650B ligand

[ハロタグリガンド化超解像イメージング用プローブ]

650-750 nm:深赤色

蛍光顕微鏡によるイメージングの分解能は、光の波長の半分程度 (200-400 nm) が理論的な限界とされています。この制約を超える「超解像蛍光顕微鏡法」(superresolution fluorescence microscopy) と呼ばれるイメージング手法の1つとして、1分子局在化法 (single molecule localization microscopy, SMLM) が広く使われています。この SMLM 専用に開発されたSaraFluor B シリーズは生理的条件下で自発的な明滅を行う蛍光色素です。 STORM や PALM といった SMLM 用の顕微鏡システムを用い、蛍光色素を明滅させるためのレーザー照射や還元剤添加を行うことなく簡単に超解像画像を得ることができます。

赤色レーザー励起 で深赤色蛍光を発する色素です。HaloTag を介して標的分子を標識できます。
*SaraFluor はアイヌ語で「見えるようになる」「明るく開けた葦原」などの意味の sara という言葉に由来する造語です。自発的明滅を行う色素には blinking の頭文字の B を付しています。
**HMSiR-Halo として販売してきたものと同一です。
※HaloTag® は Promega Cooperation の登録商標です。

価格

型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
A201-01 HaloTag® SaraFluor™ 650B Ligand 15 nmol × 1 ¥ 59,800
A201-02 HaloTag® SaraFluor™ 650B Ligand 15 nmol × 2 ¥ 99,800

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    SaraFluor Bの 物性

    名称 Absmax (nm) FLmax (nm) ε Φ
    SaraFluor 488B (HEtetTFER) 507 530 80,000 0.76
    SaraFluor 650B (HMSiR) 654 669 100,000 0.39

    SaraFluor B 点滅特性

    PBS (pH 7.4) 中でのSaraFluor B の自発的明滅。488 nm (SaraFluor 488B, HEtetTFER) または 647 nm (SaraFluor 650B, HMSiR) の各レーザーによる全反射照明で励起した蛍光画像から、1分子相当の領域の輝度変化を計測したもの。(測定光学系が異なるため、両者の縦軸は比較できません。)

    SaraFluor B スペクトル

     

     

     

     

  • SaraFluor 650B 標識抗体 イメージング例

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    SaraFluor 650B 標識抗体 イメージング例

    HeLa 細胞仮足の拡大像。細胞を固定し、抗αチューブリン抗体 (DM1A, 1/4000 希釈) および SaraFluor 650B (HMSiR) 標識2次抗体 (A202-01, 30 μg/mL) で染色した。ニコン超解像顕微鏡システム (N-STORM) で647 nm レーザー励起し、NIKON Apo TIRF 100x (NA1.49) を用いて撮影した25,000 枚の画像の平均像 (Conventional, 通常の蛍光画像に相当する) と 1,000 枚および 25,000 枚の画像を ImageJ/ThunderSTORM で解析して得た超解像画像 (single molecule localization microscopy, SMLM) 。

     

  • SaraFluor B シリーズを用いた 3D-STORM による微小管の3次元イメージング

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    3D-STORM による微小管の3次元イメージング

    SaraFluor B は生理的な溶液条件下で自発的に明滅する蛍光プローブです。これまでの dSTORM 観察の際に必要とされてきたチオールや脱酸素剤の添加の必要がなく、弱い励起光照射での観測が可能です。SaraFluor B で標識された試料を、ニコン超解像顕微鏡 N-STORM に搭載されているシリンドリカルレンズを用いて撮影・解析することにより、対物レンズの焦点を上下させることなく、3次元蛍光画像を得ることができます。

     

    SaraFluor B標識 Goat anti-mouse IgG (whole)により染色された 固定HeLa細胞内の微小管構造

    シリンドリカルレンズを通した蛍光像を撮影・解析することにより、光軸(Z軸)方向の位置を約 50 nm の精度で抽出。平面の位置情報と組み合わせることで、3D 蛍光画像を再構築した。東京大学医科学研究所 顕微鏡コアラボラトリーにおいて撮影。

    プロトコル

    1. ガラスボトムディッシュ上に培養したHeLa細胞を 3% パラホルムアルデヒドで、37℃で 20分間固定。
    2. PBS で洗浄
    3. 冷メタノールで-20℃、5分間浸透処理
    4. 5% BSA 含有 PBS 中で 30 分間インキュベートし、ブロッキング。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄。
    5. 1次抗体で染色。マウス由来抗チューブリン抗体(Purified anti-Tubulin-α Antibody (625901), BioLegend)を PBSにて 10 μg/mL に希釈し、ガラスボトムディッシュ上の固定細胞に滴下し、室温で約 2 時間反応させました。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄しました。
    6. SaraFluor 650B goat anti-mouse IgG を PBSにて10 μg/mL に希釈し、ガラスボトムディッシュ上の固定細胞に滴下し、室温、暗所にて約 2 時間反応させました。その後、PBS で 3 回(各 5 分以上)洗浄しました。
    7. NIKON N-STORM 顕微鏡で、観察しました。励起光源は 647  nm レーザーを 100 W/cm2 で使用。カメラ前のシリンドリカルレンズを挿入し、顕微鏡のマニュアルに従って画像を取得し、3D-STORM 解析を行いました。
  • フレーム数および解析ソフトウェアによる SaraFluor B シリーズの超解像イメージの差

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    フレーム数および解析ソフトウェアによる超解像イメージの差

    SaraFluor B シリーズは生理的 pH の溶液中で自発的な点滅を示す蛍光色素です。PALM/STORM 用の顕微鏡システムを使わずとも、1分子蛍光が観察できる顕微鏡を用いて多数の画像を取得すれば、ImageJ プラグイン等のソフトウェアで解析することで超解像イメージを簡単に得ることができます。

    ImageJ プラグインとして ThunderSTORM が広く使われていますが、NanoJ SRRF という異なる原理に基づく超解像イメージング用プラグインでも、TRM モードで SaraFluor B シリーズの点滅する蛍光色素像から超解像イメージを作成可能です。ここでは異なる画像枚数および異なるソフトウェアによる画像解析結果を定性的に比較しました。

    固定した HeLa 細胞を αチューブリン抗体 (DM1A, 1/4000) (1次抗体)および SaraFluor™ 650B goat anti-mouse IgG (A202-01, 30 μg/mL) (2次抗体)で染色し、NIKON N-STORM システムを用いて 647 nm レーザーによる全反射照明を 100x Apo TIRF NA 1.49 でイメージングしました。露光時間は30 msec/frame。画像は各ソフトウェアで解析を行いました。

    このとき、ThunderSTORM では 1,000 枚程度では可視化されない微小管もある一方、10,000 枚程度の画像があると充分に可視化されました。 NanoJ SRRF (TRM) は画像枚数が少ないときでも情報がより多い様子が見られました。また ThunderSTORM は高いコントラストが得られた一方、NanoJ SRRF では画像枚数が多くてもコントラストや解像度が高くならない傾向が観察されました。

     

    参考文献

    M. Ovesný, P. Křížek, J. Borkovec, Z. Švindrych, G. M. Hagen. (2014) Bioinformatics 30:2389-2390 DOI: 10.1093/bioinformatics/btu202 (ThunderSTORM)

    Nils Gustafsson, Siân Culley, George Ashdown, Dylan M. Owen, Pedro Matos Pereira, & Ricardo Henriques (2016) Nature Communications 7: 12471  DOI: 10.1038/ncomms12471 (NanoJ SRRF)

     

    謝辞

    撮影および画像解析について、北大ニコンイメージングセンターの小林健太郎様および堤元佐先生にご教示をいただきました。感謝いたします。

     

よくあるご質問

  • Q SaraFluor 650B-NHS が DMSO に溶けません。どうしたら良いですか?
    A

    SaraFluor 650B-NHS および SaraFluor 488B-NHS は 水やDMSO にやや溶けにくいため、プロトコルに従ってしっかりピペッティングして溶かし、そのまま標識してください。DMSO や水溶液中でわずかに濁った状態になることがありますが、そのまま標識可能です。試薬単体では分子同士が会合し、測定すると蛍光強度が弱い場合がありますが、プロトコル通りに標識した後は標識対象のタンパク質の効果で溶解性が良好となり、高い蛍光強度を示すようになります。

     

  • Q Q&A を見ても問題が解決しません
    A

    蛍光色素一般に関する Q&A も参照してください

参考文献

A. Morozumi, M. Kamiya, Y. Urano (2020) Neuromethods 154: 203-227 DOI: 10.1007/978-1-0716-0532-5_10  (SF488B, SF650B, Halo-SF650B)

S. Uno, M. Kamiya, A. Morozumi, Y. Urano (2018) Chem. Commun. 54:102-105 DOI: 10.1039/c7cc07783a  (SF488B, SF650B)

F-C. Chien, C-Y, Linb, G. Abrigo (2018) Phys. Chem. Chem. Phys. 20:27245-27255 DOI:10.1039/C8CP02942C (SF650B)

M. Ovesný, P. Křížek, J. Borkovec, Z. Švindrych, G. M. Hagen. (2014) Bioinformatics 30:2389-2390 DOI: 10.1093/bioinformatics/btu202 (ThunderSTORM)

S. Uno, M. Kamiya, T. Yoshihara, K. Sugawara, K. Okabe, M. C. Tarhan, H. Fujita, T. Funatsu, Y. Okada, S. Tobita, Y. Urano (2014) Nat. Chem. 6:681-689 DOI: 10.1038/NCHEM.2002 (SF650B)

※SaraFluor 650B は論文中では HMSiR という化合物名で記載されていることがあります。