ROSFluor™ Series

HYDROP™ , HYDROP-EX™

[過酸化水素の特異的な検出に]

495-540 nm:緑色

HYDROP は H2O2 (過酸化水素) を特異的に検出する蛍光プローブです。他の活性酸素種とはほとんど反応しません。HYDROP は生細胞のイメージング用、HYDROP-EX は溶液中の過酸化水素検出・定量に用いることかできます。

 

HYDROP、HYDROP-EX は Merck KGaA (Darmstadt, Germany) からも全世界にて
SCT 039 BioTracker™ Green H2O2 Dye
SCT 040 BioTracker™ Green Free H2O2 Dye 
の名前で販売されています。

価格

型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
GC3007-01 HYDROP™ 30 nmol × 3 ¥ 39,800
GC3008-01 HYDROP-EX™ 30 nmol × 3 ¥ 39,800

各種ダウンロード

  • プロトコル

  • GC3007 SDS

  • GC3008 SDS

  • 製品情報

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    HYDROP, HYDROP-EX の物性

    製品名 検出対象 膜透過性 反応  Absmax (nm)  FLmax (nm) 光安定性 輝度
    HYDROP H2O2 あり(DA) 不可逆 492 516 低い 高い
    HYDROP-EX H2O2 なし 不可逆 492 516 低い 高い

     

    HYDROP の特徴

    • 活性酸素種 (OH, O2-・,ClO, H2O21O2NO, ONOO 等) の中でも、過酸化水素に特異的に反応して蛍光が増大します。ヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、次亜塩素酸、一重項酸素、一酸化窒素では蛍光強度は増加しません。
    • HYDROP には2つのアセチル基 (DA) が付加されており過酸化水素との反応性がほとんどありませんが、細胞内で分解され過酸化水素反応性の HYDROP-EX を生成します。細胞内で生成した HYDROP-EX は膜透過性が低いため細胞内に留まり、生細胞中での過酸化水素の発生が検出できます。

     

  • HYDROP-EX, HYDROP の過酸化水素との反応特性

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    HYDROP-EX™ と活性酸素種との反応特性

    HYDROP-EX は過酸化水素に対する高い特異性があります。パーオキシナイトライトやスーパーオキシドとも弱い反応性が見られます。HYDROP (GC3007) は細胞中で HYDROP-EX に変化するため、細胞中での HYDROP の反応性は、以下の HYDROP-EX (GC3008) の反応性と同等と考えられます。

    O2: KO2 ; H2O2: H2O2, 37℃, 60 min ; OH: 過塩素酸鉄(II):H2O2 =10:1, 37℃, 60 min ; ONOO: HOONO, 25℃, 5 min ; ClO: NaOCl, 25℃, 5 min ; TBHP: tert-Butyl hydroperoxide ; NO: NOC13, 37℃, 30 min ; 1O2: EP-1, 37℃, 30 min

     

    反応速度

    過酸化水素を添加すると、すぐに蛍光上昇が観察され、時間とともに蛍光強度が上昇します。

    0.1 M リン酸バッファー (pH = 7.4) に溶解した 10 μM HYDROP-EX に、矢印で示した時点(測定開始後5分)で、各濃度になるように過酸化水素を添加した。蛍光強度は、マイクロプレートリーダーを用いて、460 nm 励起による 520 nm の蛍光を 37℃ で測定した。励起、蛍光のスリット幅はそれぞれ 9 nm と 20 nm。

     

  • HYDROP™ を用いた生細胞での過酸化水素検出例

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    HYDROP を用いた生細胞での過酸化水素検出例

    RAW264.7 細胞の H2O2 産生の測定

    1. RAW264.7 細胞 (5×104 cells/mL) を播種し、無血清 DMEMにて、37℃, 5% CO2 条件下で一晩培養。
    2. HYDROP の 1 mM DMSO 溶液を無血清 DMEM で希釈し、終濃度 1 μM の反応液を作成。
    3. 2 の反応液に ROS 阻害剤をそれぞれ加える (Apo: apocynin 終濃度 5 mM, Ebs: ebselen 終濃度 5 μM, NAC: N-acetyl-L-cysteine 終濃度 10 mM)。
    4. 培養細胞の液体培地を除去し、HBSSで 1 回洗浄。
    5. 培養容器に反応液を加え、37℃, 5% CO2 条件で 20 分間インキュベート。
    6. 無血清 DMEM に溶かした phorbol myristate acetate (PMA, 終濃度 1 ng/mL) を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 30 分間インキュベート。
    7. 培養容器から液体培地を除去し、HBSSで2回洗浄を行った後、新しいHBSSに置き換え。
    8. 蛍光顕微鏡で観察。(GFP 用バンドパスフィルタを使用)

    ※ 濃度、反応時間は細胞の種類、培養条件等に合わせて最適条件が変化する可能性があるため、条件検討を行い適切なものを選択しました。

    PMA 添加により刺激した RAW264.7 細胞は、刺激なしの細胞 (上段左図) に比べ、HYDROP 由来の斑点状のシグナルが多く検出された。また、ROS 阻害剤を加えたことにより (下段) 、それぞれ H2O2 産生が抑制されている。(スケールバーは 25 μm)

    観察条件: Leica DMI 6000 CS, objective lens: 20×, filter cube: L3 (ex. 450-490, em. 527-530 BP)

     

    オートファジー誘導による HeLa 細胞での H2O2 産生の観察

    1. HeLa 細胞 (5×104 cells/mL) を播種し、DMEM (8% FBS, PS) 、37℃, 5% CO2 存在下で一晩培養。
    2. 培養細胞より液体培地を除去し、HBSSで 1 回洗浄。
    3. Earle’s balanced salt solution (EBSS) に置換して 37℃, 5% CO2 条件下で 2 時間培養してオートファジーを誘導。(コントロールは DMEM, 8% FBS を維持)
    4. 抗酸化剤を添加する場合は、N-acetyl-L-cysteine (NAC, 終濃度 10 mM) 添加 DMEM (8% FBS, PS) を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 10分間プレインキュベートし、その後 NAC を含む EBSS または DMEM (8%FBS, +PS) に置き換え、37℃ 5% CO2 条件で 2 時間培養した。
    5. HYDROP の 1 mM DMSO 溶液を EBSS あるいは DMEM (8% FBS, PS) で希釈し、終濃度 5 μM の反応液を作成。
    6. 培養容器から液体培地を除去し、HBSS で2回リンスしたのち、反応液を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 30 分間インキュベート。
    7. 培養容器から反応液を除去し、HBSS で2回リンスの後、新しいHBSS に置換。
    8. 蛍光顕微鏡で観察。(GFP用バンドパスフィルタを使用)

    飢餓状態になった HeLa 細胞はオートファジーを誘導し H2O2 を産生することが知られている (Scherz-Shouval, 2007,  EMBO J. 26:1749-1760)。 EBSS で培養し飢餓条件となった細胞 (左) では、通常の培地で培養した細胞 (右) に比べ HYDROP 由来のシグナルが強く、 H2O2 をより多く産生していた。また、どちらの条件でも NAC 添加により H2O2 産生が抑制された。 (下段)。(スケールバーは 50 μm)

    観察条件: Leica DMI 6000 CS, objective lens: 20×, filter cube: L3 (ex. 450-490, em. 527-530 BP)

     

    A431 細胞の H2O2 産生の検出

    1. A431 細胞を播種し、DMEM (8% FBS, PS) 中で 約 60% confluentになるまでインキュベート。
    2. 培地を無血清 DMEM に置き換え、37℃, 5% CO2 条件下で一晩培養。
    3. HYDROP (終濃度 5 μM) を無血清 DMEM に添加した反応液を作成。阻害剤を加える場合は、各反応液に更に apocynin (終濃度 5 mM), ebselen (終濃度 5 μM) を添加した。
    4. 培養細胞から液体培地を除去し、HBSS で 1 回リンスの後、反応液を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 10 分間インキュベート。
    5. 反応液を除去し、HBSSで 2 回リンスした後、EGF (終濃度 500 ng/ml) を含む無血清 DMEM を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 30 分間インキュベート。
    6. 培養容器から培地を除去し、HBSS で 2 回リンスした後、新しい HBSS に置換し、蛍光顕微鏡で観察。(GFP 用バンドパスフィルタを使用)

    EGF で刺激した A431 細胞 (2段目) は、刺激していない細胞 (上段) に比べ、HYDROP 由来のシグナルがより強く検出された。また、ROS 阻害剤添加 (3、4段目) により H2O2 産生が抑制された。(スケールバーは50 μm)

    観察条件: NIKON Ti-E, objective lens: 40×, filter cube: GFP-HQ (ex. 457-487, em. 500-545 BP)

     

  • FerroOrange および ROSFluor シリーズを用いたフェロトーシス (ferroptosis) 時間経過の生細胞イメージング

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    FerroOrange および ROSFluor シリーズを用いたフェロトーシス (ferroptosis) 時間経過の生細胞イメージング

    フェロトーシスは細胞内の遊離鉄 (Fe2+) 依存的な細胞死で、アポトーシスやネクローシス等とは異なるメカニズムであることが知られています。過剰な Fe2+ により発生した活性酸素種 (ROS) により脂質過酸化などが引き起こされ、細胞死が誘導されます。いくつかの神経変性疾患においてフェロトーシスが引き起こされること、がん細胞はフェロトーシス抵抗性であることも明らかになってきています。
     ここでは、フェロトーシスを誘導する細胞内の過剰な Fe2+FerroOrange で検出するとともに、ROSFluor シリーズの APF, OxiORANGE および HYDROP による細胞内活性酸素種の検出を試みました。

    フェロトーシス過程における鉄イオンおよび活性酸素種発生の可視化

    HT-1080 細胞への erastin 投与によってフェロトーシスを誘導し、細胞死に至るまでの途中となる 3, 6, 9 時間後の各時点における細胞内の Fe2+ および ROS 発生を蛍光イメージングしました。30 µM erastin 投与後、各観察時点の 30 分前に FerroOrange (1 μM),  APF (5 μM), HYDROP (1 μM), および OxiORANGE (1 μM) を添加し細胞と反応させました。遊離 Fe2+ を検出する FerroOrange は erastin 刺激後 3 時間で一番蛍光強度が高くなりましたが、ヒドロキシラジカル (·OH)、次亜塩素酸 (HClO)、およびパーオキシナイトライト (ONOO) を検出するAPF、ヒドロキシラジカル (·OH) と次亜塩素酸 (HClO) を検出する OxiORANGE、および H2O2 を特異的に検出する HYDROP は、刺激後 6 時間で蛍光強度が最大となり、その後減少する蛍光が観察されました。これらのことから、フェロトーシスの過程においては細胞内鉄イオンの増加に続いて活性酸素種が増加することが確認できました。

    フェロトーシスを誘導した HT-1080 細胞における FerroOrange および APF の蛍光の変化

    Erastin を添加した HT-1080 細胞の FerroOrange および APF の蛍光を、各波長域の蛍光強度(上段、中段)および疑似カラーで重ね合わせた。マゼンタは FerroOrange の蛍光、緑は APF の蛍光を示す。スケールバーは、100 µm。

    フェロトーシスを誘導した HT-1080 細胞における OxiOrange および HYDROP の蛍光の変化

    Erastin を添加した HT-1080 細胞の OxiOrange および HYDROP の蛍光を、各波長域の蛍光強度(上段、中段)および疑似カラーで重ね合わせた。マゼンタは OxiOrange の蛍光、緑は HYDROP の蛍光を示す。スケールバーは、100 µm。

     

    実験プロトコル

    1. 3.5 cm ガラスボトムディッシュ(培養容器)に 2 × 105 個の HT-1080 細胞を播種して培養し、細胞を接着させた。
    2. 培養上清に終濃度が 30 µM となるように erastin を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 3, 6, 9 時間培養。
    3. Erastin 刺激後 2.5, 5.5, 8.5 時間の時点で、に培養上清に各プローブを添加し、37℃,  5% CO2 条件下で 30 分間培養。
    4. 上記細胞を HBSSで 2 回リンスし、蛍光顕微鏡で観察。

    ※細胞の培養条件等により最適な条件は異なる可能性があります。本実験でも、事前に予備試験により試薬濃度および観察までの時間を調整しました。
    ※細胞がディッシュからはがれやすい場合は、 poly-L-lysine コーティングしたディッシュを使用してください。

    実験のタイムスケジュール。3 時間ごとにずらして erastin を投与し、洗浄、蛍光プローブとの反応は、全てのサンプルで同時に行いました。不可逆的な反応をする蛍光プローブで反応の時間経過を観察するため、同条件の細胞を複数用意し、時間を変えて実験することで、擬似的に時間変化を観察しました。

     

よくあるご質問

  • Q OxiORANGE, HYDROP, APF, HPF の溶媒に DMSO は使えますか?
    A

    DMSO はヒドロキシラジカルのクエンチャーになることが知られています。そのため、これらの試薬がヒドロキシラジカルまたはヒドロキシラジカルの影響で増加する ROS を検出しづらくなることが予想されるため、溶媒として DMF を推奨しています。

  • Q ROSFluor シリーズの使い分けを教えてください
    A

    以下の表をご参照ください。

    型番 製品名 Exmax (nm) Emmax (nm) OH ONOO HClO H2O2 O2-・ 溶液中での
    ROS検出
    培養細胞内でのROS検出
    GC3004-01 OxiORANGE 553 577 + + + +
    GC3006-01 HySOx 553 574 + + +
    GC3007-01 HYDROP 492 518 + +
    GC3008-01 HYDROP-EX 492 518 + +
    SK3001-01 HPF 490 515 + + + +
    SK3002-01 APF 490 515 + + + + +
    SK3003-01 NiSPY-3 490 515 + + +

    ※HYDROP-EXは細胞膜透過性が低く、細胞外や溶液中の H2O2 の測定に適しています。一方 HYDROP はジアセチル化された試薬で、細胞外の H2O2 検出はできません。