ROSFluor™ Series

OxiORANGE™

[酸化ストレス (ROS) 検出用蛍光プローブ]

570-590 nm:橙色

OxiORANGE はヒドロキシラジカル  (OH) および次亜塩素酸 (HClO) と反応してオレンジ色の蛍光を発する蛍光プローブです。赤に近い蛍光波長を持つため、GFP や Hoechist 33342 などの蛍光と区別することが可能です。

正電荷を持つためミトコンドリアに局在しやすい性質があります。光褪色にも強く、生細胞のイメージングに最適です。

 

OxiORANGEは Merck KGaA (Darmstadt, Germany) からも全世界にて
SCT 038 BioTracker™ Orange OH and HCIO Dye の名前で販売されています。

 

 

 

価格

型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
GC3004-01 OxiORANGE™ 100 nmol ×5 ¥ 49,800

各種ダウンロード

  • プロトコル

  • SDS

  • 製品情報

    印刷する

    OxiORANGE の物性

    製品名 検出対象 膜透過性 反応性  Absmax (nm)  FLmax (nm)
    OxiORANGE ・OH, HClO あり 不可逆 553 577

     

    特徴

    • 活性酸素種 (OH, O2-・,HClO, H2O2,NO, ONOO など)の中でも、hROS と呼ばれる反応性の高いヒドロキシラジカル (OH) および次亜塩素酸 (HClO) を検出できます。スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化窒素、パーオキシナイトライトでは蛍光強度の増加が見られません。
    • 比較的強い蛍光を示し、光褪色にも強いため、細胞内の hROS 産生のタイムラプスイメージングに適します。
    • オレンジ色の蛍光を示すため、緑や青色、長波長赤色などの蛍光色素とのマルチカラーイメージングが可能です。
    • 細胞内ではミトコンドリアに蓄積し、高い細胞内滞留性を示します。
    • ROS との反応後に固定しても蛍光が保たれます。(3-4% 以下のパラホルムアルデヒド)

    測定原理

    OxiORANGE は中性水溶液中でほとんど蛍光を発しませんが、・OH または HClO と反応すると、強蛍光化合物に変化し(励起最大波長 553 nm、蛍光最大波長 577 nm)、蛍光強度の増大が観測されます。 細胞膜透過性が高く、細胞内では膜電位によってミトコンドリアに蓄積します。

    OxiORANGE のスペクトルと反応性

    吸光および蛍光スペクトル(左)と活性酸素種に対する反応選択性(右)

    ・OH との反応前に比べ、反応後はおよそ 30 倍の蛍光が検出されます。

    スペクトル測定条件
    • OxiORANGE(最終濃度 10 μM, コソルベントとして 0.1 % DMF) を溶解したリン酸バッファー (0.1 M, pH 7.4) に、NaOCl(終濃度 5 μM)を加え、スペクトルを測定した。
    • 励起波長553 nm、slit width 2.5mm, photon multiplier voltage 700 V.
    反応選択性測定条件(右)
    • OxiORANGE(終濃度10 μM, コソルベントとして 0.1 % DMF) を溶解したリン酸バッファー(0.1 M, pH 7.4) に、以下の活性酸素種生成系を添加(最終濃度)。
    • 励起波長 553 nm、測定波長 577 nm, slit width 2.5mm, photon multiplier voltage 700 V.
    各活性酸素種生成条件

    OH: 過塩素酸鉄(II)300 μM, H2O2 1 mM, RT, 5 min
    ONOO: ONOO 50 μM, RT, 5 min
    HClO: NaOCl 50 μM, RT, 5 min
    NO: NOC18 5 μM, 37℃, 30 min
    O2-・: KO2 100 μM, 37℃, 30 min
    H2O2: H2O2 100 μM, 37℃, 30 min

  • OxiORANGE による細胞イメージング例

    印刷する

    OxiORANGE による細胞イメージング例

    特徴1. 明るく観察しやすい蛍光

    ミトコンドリア局在性の酸化ストレス検出プローブ比較

    OxiORANGE™(上段), 他社製品A(中段), 他社製品B(下段)各 1 μM を添加した培地中で RBL-2H3 細胞を 15 分インキュベートしたのち洗浄し、0.5 μM H2O2 を加えて ROS 産生を誘導した直後(左)と 20 分後(右)。照明光強度と露出条件を揃えて撮影。それぞれ異なる酸化ストレス物質を検出する試薬ではあるが、一般的な酸化ストレス検出用途としては OxiORANGE の蛍光は明るくて観察しやすいことがわかる。
    また、製品 B は時間経過とともに核内へ移行するのが観察されたが、OxiORANGE では局在の大きな変化は観察されなかった。
    NIKON Eclipse Ti, (PlanFluor 40×0.75), HAMAMATSU ORCA-R2 にて観察。

     

    活性酸素種検出試薬の比較

    OxiORANGE (1 μM, 上段) または他社製品 C (5 μM, 下段) を培地に添加して 30 分間インキュベートした HeLa 細胞を洗浄し、1 mM H2O2 を加えて刺激しROS産生を誘導した。製品 C でも蛍光の増加が認められたが、OxiORANGE では刺激後 15 分ではっきりとした蛍光の増加が観察された。

    特徴2. 固定後にも観察可能

    OxiORANGE はROS との反応により、蛍光物質に非可逆的に変化し、主にミトコンドリアに局在します。固定後も蛍光が観察できます。

    固定による蛍光の変化。HeLa細胞を 1 μM の OxiORANGE と0.2 μg/mL Hoechist 33342 を含む培地で 30 分間培養したのち、 HBSS で 2 回洗浄し、500 μM の H2O2 で刺激し、30 分間に渡りROS 発生を観察した(左)。その後 3% PFA を含む PBS で 4℃ 20 分間固定してから、再度、同条件で撮影した(右)。

    赤: OxiORANGE™, 青: Hoechist33342, グレー: DIC の重ね合わせ。
    ※ 使用顕微鏡: NIKON ECLIPSE Ti, (PlanFluor 40×0.75) ), Hamamatsu ORCA-R2

    OxiORANGE™ の細胞内での局在は、固定により変化します。また、固定により蛍光が若干減弱することがあるため、ご使用前に条件検討を行ってください。

     

    OxiORANGE の細胞内局在

    OxiORANGE はミトコンドリアに局在しやすい性質がありますが、試薬濃度が高い場合や、他のミトコンドリア局在性試薬などと共存させること、その他の理由でミトコンドリア以外にも分布する場合があります。

    HeLa 細胞に OxiORANGE (0.5 μM) を導入し、100 μM 過酸化水素と 30 分間反応させ、MitoTrackerGREEN (0.25 μM), Hoechst33342 (0.2 μg/mL)  による染色とともに観察したもの。

  • OxiORANGE を用いた HeLa 細胞中の hROS 産生の検出

    印刷する

    OxiORANGE を用いた HeLa 細胞中の hROS 産生の検出

    反応プロトコル

    1. OxiORANGE 1 バイアル (100 nmol) を DMF 100 μL に溶解した 1 mM 溶液を作成。
    2. 上記の 1 mM 溶液を HBSS などのバッファー、あるいは細胞培養メディウムで終濃度 1 μM となるように希釈し反応液を作成。  
    3. HeLa 細胞より液体培地を除去し、HBSS などのバッファーで1回リンスし、上記反応液に置換。 37℃ で 20 分間インキュベーションしました。
    4. 反応後の細胞を HBSS で2回リンスし、フェノールレッドが含まれていない観察用メディウムに置換してから観察用の CO2 インキュベーターにセット。
    5. 500 μM H2O2 を添加して細胞の hROS 産生を誘導し、同時にタイムラプスイメージングを開始。

    ※ 細胞種や培養条件によって、最適なプローブ濃度および反応時間が異なる可能性があります。弊社の検討では、HeLa 細胞、マウスマクロファージ様細胞株 (RAW264.7細胞)、ラットマスト細胞株 (RBL-2H3細胞) およびヒト骨髄性白血病細胞株 (HL-60) にて、1 μM, 37℃ 20分の条件で良好な結果が確認できています。

    ※ HeLa 細胞は飢餓状態で ROS 産生が促進される報告があるため、観察には PBS や HBSS などのバッファー溶液ではなく、フェノールレッドの含まれていない細胞培養メディウムの使用をおすすめします。

    OxiORANGE™によるHeLa細胞のhROS検出

    ※ 使用顕微鏡: NIKON Eclipse Ti, (PlanFluor 40×0.75) ), HAMAMATSU ORCA-R2

    抗酸化剤 (NAC: N-acetyl-cysteine) を加えた細胞 (向かって右列) にくらべ、NACを加えていない細胞 (向かって左列) で蛍光強度の増強が見られた。 NAC は hROS を抑制することからも、OxiORANGE™ が細胞内 hROS を検出していることがわかる。

    タイムラプス動画もYouTubeでご覧いただけます。

  • FerroOrange および ROSFluor シリーズを用いたフェロトーシス (ferroptosis) 時間経過の生細胞イメージング

    印刷する

    FerroOrange および ROSFluor シリーズを用いたフェロトーシス (ferroptosis) 時間経過の生細胞イメージング

    フェロトーシスは細胞内の遊離鉄 (Fe2+) 依存的な細胞死で、アポトーシスやネクローシス等とは異なるメカニズムであることが知られています。過剰な Fe2+ により発生した活性酸素種 (ROS) により脂質過酸化などが引き起こされ、細胞死が誘導されます。いくつかの神経変性疾患においてフェロトーシスが引き起こされること、がん細胞はフェロトーシス抵抗性であることも明らかになってきています。
     ここでは、フェロトーシスを誘導する細胞内の過剰な Fe2+FerroOrange で検出するとともに、ROSFluor シリーズの APF, OxiORANGE および HYDROP による細胞内活性酸素種の検出を試みました。

    フェロトーシス過程における鉄イオンおよび活性酸素種発生の可視化

    HT-1080 細胞への erastin 投与によってフェロトーシスを誘導し、細胞死に至るまでの途中となる 3, 6, 9 時間後の各時点における細胞内の Fe2+ および ROS 発生を蛍光イメージングしました。30 µM erastin 投与後、各観察時点の 30 分前に FerroOrange (1 μM),  APF (5 μM), HYDROP (1 μM), および OxiORANGE (1 μM) を添加し細胞と反応させました。遊離 Fe2+ を検出する FerroOrange は erastin 刺激後 3 時間で一番蛍光強度が高くなりましたが、ヒドロキシラジカル (·OH)、次亜塩素酸 (HClO)、およびパーオキシナイトライト (ONOO) を検出するAPF、ヒドロキシラジカル (·OH) と次亜塩素酸 (HClO) を検出する OxiORANGE、および H2O2 を特異的に検出する HYDROP は、刺激後 6 時間で蛍光強度が最大となり、その後減少する蛍光が観察されました。これらのことから、フェロトーシスの過程においては細胞内鉄イオンの増加に続いて活性酸素種が増加することが確認できました。

    フェロトーシスを誘導した HT-1080 細胞における FerroOrange および APF の蛍光の変化

    Erastin を添加した HT-1080 細胞の FerroOrange および APF の蛍光を、各波長域の蛍光強度(上段、中段)および疑似カラーで重ね合わせた。マゼンタは FerroOrange の蛍光、緑は APF の蛍光を示す。スケールバーは、100 µm。

    フェロトーシスを誘導した HT-1080 細胞における OxiOrange および HYDROP の蛍光の変化

    Erastin を添加した HT-1080 細胞の OxiOrange および HYDROP の蛍光を、各波長域の蛍光強度(上段、中段)および疑似カラーで重ね合わせた。マゼンタは OxiOrange の蛍光、緑は HYDROP の蛍光を示す。スケールバーは、100 µm。

     

    実験プロトコル

    1. 3.5 cm ガラスボトムディッシュ(培養容器)に 2 × 105 個の HT-1080 細胞を播種して培養し、細胞を接着させた。
    2. 培養上清に終濃度が 30 µM となるように erastin を加え、37℃, 5% CO2 条件下で 3, 6, 9 時間培養。
    3. Erastin 刺激後 2.5, 5.5, 8.5 時間の時点で、に培養上清に各プローブを添加し、37℃,  5% CO2 条件下で 30 分間培養。
    4. 上記細胞を HBSSで 2 回リンスし、蛍光顕微鏡で観察。

    ※細胞の培養条件等により最適な条件は異なる可能性があります。本実験でも、事前に予備試験により試薬濃度および観察までの時間を調整しました。
    ※細胞がディッシュからはがれやすい場合は、 poly-L-lysine コーティングしたディッシュを使用してください。

    実験のタイムスケジュール。3 時間ごとにずらして erastin を投与し、洗浄、蛍光プローブとの反応は、全てのサンプルで同時に行いました。不可逆的な反応をする蛍光プローブで反応の時間経過を観察するため、同条件の細胞を複数用意し、時間を変えて実験することで、擬似的に時間変化を観察しました。

     

よくあるご質問

  • Q OxiORANGE, HYDROP, APF, HPF の溶媒に DMSO は使えますか?
    A

    DMSO はヒドロキシラジカルのクエンチャーになることが知られています。そのため、これらの試薬がヒドロキシラジカルまたはヒドロキシラジカルの影響で増加する ROS を検出しづらくなることが予想されるため、溶媒として DMF を推奨しています。

  • Q ROSFluor シリーズの使い分けを教えてください
    A

    以下の表をご参照ください。

    型番 製品名 Exmax (nm) Emmax (nm) OH ONOO HClO H2O2 O2-・ 溶液中での
    ROS検出
    培養細胞内でのROS検出
    GC3004-01 OxiORANGE 553 577 + + + +
    GC3006-01 HySOx 553 574 + + +
    GC3007-01 HYDROP 492 518 + +
    GC3008-01 HYDROP-EX 492 518 + +
    SK3001-01 HPF 490 515 + + + +
    SK3002-01 APF 490 515 + + + + +
    SK3003-01 NiSPY-3 490 515 + + +

    ※HYDROP-EXは細胞膜透過性が低く、細胞外や溶液中の H2O2 の測定に適しています。一方 HYDROP はジアセチル化された試薬で、細胞外の H2O2 検出はできません。