AcidiFluor™ Series

AcidiFluor™ ORANGE-NHS

[酸性 pH 応答性プローブ]

570-590 nm:橙色

AcidiFluor ORANGE-NHS は、酸性 pH を蛍光で検出できる蛍光母核に、混合するだけで1級アミンと共有結合を形成する  N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)を付加したタンパク質・核酸標識用の酸性 pH 検出蛍光プローブです。

抗体などを標識することで、標的分子周辺の酸性 pH の検出や、目的の分子が酸性オルガネラに取り込まれる様子を可視化するなどの目的に使用できます。

 

AcidiFluor ORANGE-NHS は Merck KGaA (Darmstadt, Germany) からも全世界にて
SCT 214  BioTracker Orange-NHS Live Cell pH Dye の名前で販売されています。

 

価格

型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
GC302 AcidiFluor™ ORANGE-NHS 1 mg ¥ 84,800
GC303 AcidiFluor™ ORANGE-NHS 5 μg × 5 ¥ 49,800

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    AcidiFluor ORANGE-NHS 概要

    AcidiFluor ORANGE-NHS は下図のように、NHS を介してタンパク質のリジン残基等に含まれる1級アミンを標識できます。

     

    AcidiFluor ORANGE-NHS の物性

    名称 検出対象 反応 pKa
    Absmax (nm) FLmax (nm) ε Φ
    AcidiFluor ORANGE-NHS pH 可逆 5.3, 6.8 544 565 80,000 0.7

     

    S/N 比が高い

    pH 5 および 7.4 のリン酸緩衝液中 (0.1 M) で、各 pH プローブの NHS 体および BSA 標識体の蛍光強度を比較した。pH 5.0 における AcidiFluor ORANGE-NHS の蛍光強度は pH 7.4 と比較して、約 20 倍に増大した。一方、pHrodo™ Red-NHS  (Life Technology 社) は約 1.8 倍、CypHer™ 5E-NHS  (GE Healthcare) は約 7.5 倍であり、AcidiFluor ORANGE-NHS がより鋭敏に酸性 pH を捉えた。同様に BSA 標識体の測定結果から、標識後の pH 応答性は AcidiFluor ORANGE のみで高く維持されることが示された。

    AcidiFluor™ ORANGE-NHS : λex 532 nm / λem 568 nm
    pHrodo™ Red-NHS (Life Technology社) : λex 560nm / /λem 582 nm
    CypHer™ 5E-NHS (GE Healthcare社) : λex 644 nm / /λem 667 nm

     

    細胞内の箇所を選択し、経時的な蛍光強度をグラフ化した。AcidiFluor™ ORANGE-BSAは、細胞に取り込まれると経時的に蛍光強度が上昇したが、pHrodo-BSA、CypHer5E-BSAは、蛍光強度変化は観察されなかった。

     

    AcidiFluor™ ORANGE-NHS – BSA標識体のHeLa細胞によるエンドサイトーシス観察

  • AcidiFluor ORANGE-NHS および AcidiFluor-ORANGE Zymosan A による細胞イメージング例

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    AcidiFluor ORANGE-NHS および AcidiFluor-ORANGE Zymosan A による細胞イメージング例

     

    A431細胞 (EGFR過剰発現細胞株) による AcidiFluor ORANGE-NHS で標識した anti-EGFR 抗体の取り込み

    anti-EGFR 抗体をAcidiFluor ORANGE-NHS と反応させ、限外ろ過により未反応色素の除去を行った。この AcidiFluor ORANGE 標識した anti-EGFR 抗体を、EGFR が過剰発現している細胞株である A431 細胞に添加し、共焦点顕微鏡にて経時的に観察を行った。抗体添加後 120 分で AcidiFluor ORANGE 由来の蛍光が検出され始め、180 分以降で高い蛍光強度が得られた。この手法により、AcidiFluor ORANGE 標識 anti-EGFR 抗体がエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、酸性化する様子をとらえることができた。

     

    AcidiFluor ORANGE ZymosanA の RAW264.7 細胞による貪食撮影例

    AcidiFluor ORANGE-ZymosanAを、RAW264.7細胞に添加し、蛍光顕微鏡にて経時的に観察を行った。AcidiFluor ORANGE-ZymosanA を取り込んだ細胞内で、蛍光強度の上昇が見られたことから、小胞の酸性化が示唆された。

よくあるご質問

  • Q pH 3以下での蛍光強度は?
    A

    AcidiFluor ORANGEのpH 3 以下での蛍光強度は、pH 3の強度とほとんど同じことがわかっています。

  • Q 固定細胞に使えますか?
    A

    基本的には固定細胞では使用できません。リソソームやエンドソームの酸性 pH は生きている細胞の活性によって酸性 pH が保たれており、固定により死んだ細胞ではその酸性が維持されなくなるためです。

    ただし、リソソームに局在する AcidiFluor ORANGE、抗体などを標識した AcidiFluor-NHS や  HaloTag に結合した HaloTag AcidiFluor ORANGE ligand の局在を知る目的で、固定後速やかに酸性 pH バッファーに置換して蛍光を確認することは可能と考えられます。

  • Q NHS 体を使い効率よく標識する方法を教えてください
    A

    標識する抗体等、タンパク質はできるだけ精製されたものを使用してください。未精製のタンパク質に標識したい場合は、アフィニティカラム、限外ろ過やゲルろ過などで夾雑物を除いた後に標識を行うと効率が上がります。また、トリスバッファーはアミノ基を含むため、このバッファー中での NHS による標識は行うことができません。脱塩カラム、ゲルろ過カラム、透析などでトリスバッファーをリン酸緩衝液または Good buffer (PIPES, HEPES 等) などアミノ基を含まないバッファーに置換した上での標識が必要です。

    また、タンパク質や条件によっても異なりますが、 37℃ で 30分から 1 時間反応させるよりも、4℃ で一晩反応させるほうが標識率が上がることが多くあります。

  • Q タンパク質の 280 nm での分子吸光係数はどのように調べたらよいですか?
    A

    タンパク質の 280 nm での吸光度は、Gill and von Hippel (1989) Analytical Biochemistry, 182: 319-326 や Anthis and Clore (2013) Protein Science 22:851-858 などの方法で求めることができます。以下のような Web サイトでも計算サービスが提供されているようですが、ご利用にあたってはそれぞれのサイトの利用条件などの説明に従ってください。

    http://protcalc.sourceforge.net/
    http://web.expasy.org/protparam/
    http://nickanthis.com/tools/a205.html

  • Q 0.1 M sodium bicarbonate buffer の作り方を教えてください。またこのバッファーを使う理由は?
    A

    炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) を 0.1 M になるように純水に溶解してください。およそ pH 8.0から8.4 程度になるはずですのでそのままお使いください。pH が外れている場合は、Na2CO3 や HCl などで微調整していただいても構いません。

    NHS エステルと1級アミンの反応は pH 8.0から 8.6 付近で効率よく進行します。そのため、Tris buffer などのアミノ基を含むバッファー以外であれば、HEPES, リン酸バッファー、ホウ酸バッファーなども同様に使用可能です。

  • Q Q&A を見ても問題が解決しません
    A

    蛍光色素一般に関する Q&A も参照してください

参考文献

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Anticancer Res. 41: 4089-4092 DOI:10.21873/anticanres.15211

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