AcidiFluor™ Series

AcidiFluor™ ORANGE-Zymosan A

[酸性 pH 応答性プローブ]

570-590 nm:橙色

AcidiFluor ORANGE-Zymosan A は、ファゴサイトーシスの検出によく用いられる Zymosan A を AcidiFluor ORANGE-NHS で標識した試薬です。PBS(-) で分散させて、貪食機能を有する細胞に投与するだけで観察が可能です。
AcidiFluor ORANGE-NHS の機能はそのままで高い pH 応答性を示します。

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型番 製品名 容量 希望小売価格(税抜価格)
GC305 AcidiFluor™ ORANGE-Zymosan A 1 mg ¥ 49,800

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    AcidiFluor ORANGE-NHS の物性

    名称 検出対象 反応 pKa
    Absmax (nm) FLmax (nm) ε Φ
    AcidiFluor ORANGE-NHS pH 可逆 5.3, 6.8 544 565 80,000 0.7
  • AcidiFluor ORANGE-NHS および AcidiFluor-ORANGE Zymosan A による細胞イメージング例

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    AcidiFluor ORANGE-NHS および AcidiFluor-ORANGE Zymosan A による細胞イメージング例

     

    A431細胞 (EGFR過剰発現細胞株) による AcidiFluor ORANGE-NHS で標識した anti-EGFR 抗体の取り込み

    anti-EGFR 抗体をAcidiFluor ORANGE-NHS と反応させ、限外ろ過により未反応色素の除去を行った。この AcidiFluor ORANGE 標識した anti-EGFR 抗体を、EGFR が過剰発現している細胞株である A431 細胞に添加し、共焦点顕微鏡にて経時的に観察を行った。抗体添加後 120 分で AcidiFluor ORANGE 由来の蛍光が検出され始め、180 分以降で高い蛍光強度が得られた。この手法により、AcidiFluor ORANGE 標識 anti-EGFR 抗体がエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、酸性化する様子をとらえることができた。

     

    AcidiFluor ORANGE ZymosanA の RAW264.7 細胞による貪食撮影例

    AcidiFluor ORANGE-ZymosanAを、RAW264.7細胞に添加し、蛍光顕微鏡にて経時的に観察を行った。AcidiFluor ORANGE-ZymosanA を取り込んだ細胞内で、蛍光強度の上昇が見られたことから、小胞の酸性化が示唆された。

  • AcidiFluor ORANGE-Zymosan A のフローサイトメーターでの使用例

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    AcidiFluor ORANGE-Zymosan A のフローサイトメーターでの使用例

    概要

    AcidiFluor ORANGE-Zymosan A は、免疫細胞の貪食作用を研究するためによく使用される Zymosan A を、酸性環境で蛍光が増強する AcidiFluor ORANGE で標識したものです。貪食されることによりファゴソーム中の酸性環境で強い蛍光を発するため、貪食作用の研究などに使われます。ここでは、マウスマクロファージ由来の RAW 264.7 細胞による貪食能をフローサイトメーターを用いて評価した結果と、類似色素との比較を示します。

    RAW264.7 細胞のファゴサイトーシスの測定例

    図1. AcidiFluor ORANGE-Zymosan A (AFO-ZymosanA) の投与量に応じた貪食細胞の割合の変化
    同じ細胞数の RAW264.7 細胞に各濃度の AcidiFluor ORANGE-Zymosan A を加え、1時間培養して貪食させたのち、AFO の蛍光が観察される細胞数をフローサイトメーターで計測した。左図が結果のまとめ、右図は各条件におけるフローサイトメーターの測定結果で、横軸が AFO の蛍光強度、縦軸が細胞数を示す。図示したように、6×102 以上の蛍光強度を示す細胞を蛍光ポジティブ細胞と判定し、その割合を左図にプロットした。AFO の蛍光強度は、488 nm レーザーで励起し、586/42 nm (Phycoerythrin 用)フィルターを使用して測定した。

    計測プロトコル

    1. RAW264.7 細胞 7.5×104 個を 12 well plate に播種し、一晩培養した。
    2. 細胞培養培地に AcidiFluor ORANGE-Zymosan A を懸濁させて懸濁液を作成した。
    3. 2 を 2分間ソニケーションし、2 分間 4 ℃ で冷却した。この操作を 5 回繰り返し、トータル 10 分間のソニケーションにより AcidiFluor ORANGE-Zymosan A を分散させた。
    4. 培養容器より液体培地を除去し、希釈した AcidiFluor ORANGE-Zymosan A 懸濁液が終濃度 50 µg/mL となるように細胞に加え、37℃, 5% CO2 条件下で 1 時間インキュベート。
    5. 反応後の余分な AcidiFluor ORANGE-Zymosan A 懸濁液を培養容器から除去し、PBS で細胞を洗浄。
    6. Trypsin-EDTA 液を加え、細胞を培養容器から剥がした。
    7. 血清を含む細胞培養メディウムを添加し、トリプシンを中和。
    8. 遠心により細胞を沈殿させて上清を除き、細胞を PBS に懸濁。
    9. フローサイトメーターの詰まりを防ぐため、細胞懸濁液を 40 µm のセルストレイナーで濾過。
    10. フローサイトメーターで測定した。

     

    図2. 食作用阻害剤の効果
    RAW264.7 細胞に各濃度の食作用阻害剤を添加して1時間培養後に、AcidiFluor ORANGE-Zymosan A が終濃度 50 µg/mL となるように加え1時間培養し、洗浄してフローサイトメーターによる測定を行った。食作用阻害剤として、サイトカラシンDを終濃度が 0 (赤), 1 (黄色), 2 (緑), 5 (青), 10 (紫) µg/mL となるように添加した。

    左図が結果のまとめ、右図は各条件におけるフローサイトメーターの測定結果で、横軸が AFO の蛍光強度、縦軸が細胞数を示す。6 × 102 以上の蛍光強度を示す細胞を貪食細胞と判定した。各濃度の cytochalasin D における食作用阻害率

    を計算した。ただし、R+ はサイトカラシンD処理での貪食細胞の割合、R はサイトカラシンD未処理のときの貪食細胞の割合である。得られたサイトカラシンD の各濃度における食作用阻害率  72% (1 µM), 80% (2 µM), 90% (5 µM), 95% (10 µM) を左図にプロットした。
    また、AFO の蛍光強度は、488 nm レーザーで励起し、586/42 nm (Phycoerythrin用)フィルターを使用して測定した。Negative control (未処理サンプル)は、破線(黒)で示している。

    これらのデータから、AcidiFluor ORANGE-Zymosan A の蛍光強度はマクロファージの貪食能をよく反映していると考えられる。

     

    類似色素との比較

    AcidiFluor ORANGE-Zymosan A は、類似の pH 感受性色素である pHrodo™ Red-Zymosan A と比べ蛍光強度が高く、陰性細胞と陽性細胞との区別が容易です。また、類似の pH 感受性色素である pHrodo™ Green-Zymosan A と同じ Zymosan A 濃度で比較すると、より高いシグナル強度が得られます。

    図3. 類似 pH 感受性色素である pHrodo Red-Zymosan A および pHrodo Green-Zymosan A との比較
    RAW264.7 細胞に 10, 30, 50, 100 µg/mL の各色素で標識された Zymosan A を添加し、CO2 incubator 内で 1 時間反応後、PBS で洗浄してフローサイトメーターで測定した。得られた蛍光強度分布から貪食細胞 (phagocytotic cell) の数およびそれ以外 (unphagocytotic cell) を求め、比率を左図に示した。 右には、50 µg/mL のときの蛍光強度分布を例示。3×102 以上の蛍光強度を示す細胞を貪食細胞と判定した。Negative control (未処理サンプル)は破線(黒)で示した。
    各色素は 488 nm レーザーで励起し、AcidiFluor ORANGE-Zymosan A および pHrodo Red-Zymosan A は 586/42 nm (Phycoerythrin 用)フィルターを使用、pHrodo Green-Zymosan A は 537/32 nm (FITC 用)フィルターを使用して測定した。

    図3に示すように、どの濃度においても AcidiFluor ORANGE-Zymosan A (図3左:橙)は、他製品に比べ貪食細胞検出率が高かった。また、図3右にあるように AcidiFluor ORANGE-Zymosan A (図3右上 実線: 橙)は、pHrodo Red-Zymosan A (図3右上点線:赤)に比べ、 貪食細胞と非貪食細胞のピークの分離がより明瞭である。

よくあるご質問

  • Q pH 3以下での蛍光強度は?
    A

    AcidiFluor ORANGEのpH 3 以下での蛍光強度は、pH 3の強度とほとんど同じことがわかっています。

  • Q 固定細胞に使えますか?
    A

    基本的には固定細胞では使用できません。リソソームやエンドソームの酸性 pH は生きている細胞の活性によって酸性 pH が保たれており、固定により死んだ細胞ではその酸性が維持されなくなるためです。

    ただし、リソソームに局在する AcidiFluor ORANGE、抗体などを標識した AcidiFluor-NHS や  HaloTag に結合した HaloTag AcidiFluor ORANGE ligand の局在を知る目的で、固定後速やかに酸性 pH バッファーに置換して蛍光を確認することは可能と考えられます。

  • Q Q&A を見ても問題が解決しません
    A

    蛍光色素一般に関する Q&A も参照してください