よくあるご質問

蛍光観察一般に関するご質問

  • Q 検出ターゲットが増えれば蛍光が増大し、減れば蛍光は減りますか?
    A

    いいえ。

    AcidiFluor series や QuicGSH など、製品の説明に「可逆的」と記載がある一部の製品を除き、多くの製品は非可逆的に検出ターゲットと反応して蛍光物質に変化する試薬です。そのため、蛍光強度はターゲットのその瞬間の濃度ではなく、試薬添加時から測定時までに発生した検出ターゲットの総和(積分)を反映しています。そのため、蛍光強度増加曲線の傾き(微分)がターゲットの量を反映します。

    このように非可逆的な反応を使用しているのは、細胞中の ROS や NO のように分子の寿命が短いものや、Fe2+ のように濃度が低いものを効率的に可視化するためです。これらを可逆的な設計の蛍光プローブで検出するのは困難です。

  • Q 相対的な濃度変化の観察ではなく、定量はできますか?
    A

    非可逆的な反応による蛍光を発するタイプの蛍光プローブで、細胞膜透過性のないものによる細胞外での定量は可能です。濃度既知の溶液で検量線を作製し、それを基準としてください。ただし、細胞内での濃度定量用と明記された一部の蛍光プローブを除き、細胞内での正確な定量は困難です。困難な理由は、細胞内のプローブ濃度を測定することが難しいためです。

  • Q 蛍光プローブを最初に溶解するための有機溶媒について教えてください
    A

    各製品のプロトコル推奨の溶媒を使用してください。多くの蛍光プローブは、最初に dimethyl sulfoxide (DMSO) または N,N-dimethylformamide (DMF) に溶解してからバッファー溶液などの水溶液で希釈します。水溶性が高くない物質は、ミリモルオーダーの水溶液を作るのが難しかったり、最初に有機溶媒に溶かしたほうが安定した水溶液を作成できるためです。

    一級アミンと反応するNHS は水溶液中で分解やすいため、まずは脱水した DMSO に溶解してから、pH 8.4 前後の溶液に溶かしたタンパク質などとすみやかに混合しながら反応させてください。脱水 DMSO は試薬として販売されているほか、通常の DMSO に高温、減圧条件で乾燥させたモレキュラーシーブス 3A を添加して脱水することもできます。

    有機溶媒は一般に長期間保存すると空気中の水分を吸ったり、酸化や紫外線の影響などで品質が低下します。品質が低下した溶媒を用いると、蛍光のバックグラウンドが上昇したり、反応性が低下することがあります。DMSO の場合はできるだけグレードの高いものを開封後すぐに分注して超低温フリーザーで保管すると比較的長く品質を保つことができるようです。この場合、吸湿させないために分注はなるだけ乾燥した環境で行い、また開封前に完全に室温に戻すようご注意ください。DMF についても湿気、高温、紫外線を避けて保管し、開封後はできるだけ早くご使用ください。

  • Q 固定細胞やパラフィン切片で使用できますか?
    A

    さまざまな生体物質や生体反応を検出するアクティベイタブル型の蛍光プローブをパラフィン切片で使用することは、一般的にはできないと考えてください。(SaraFluor series はアクティベイタブルプローブではないため、これらで標識した蛍光2次抗体は使用可能です。)また、固定細胞での使用も注意が必要です。

    アクティベイタブル蛍光プローブは、多くの場合、細胞内のイオンや活性酸素種などと反応して発色します。これらの局在や濃度などは、生きている細胞の活性によって保たれています。これらが固定後にも保たれているかどうかは観察の目的や固定の方法によって異なります。例えば活性酸素種は寿命が短いものが多いため、細胞の酵素活性種を検出するタイプの蛍光プローブでは、固定によりほとんど反応しなくなると考えられます。

    ただし、生細胞でプローブを反応させて発色させた後、アルデヒド類で固定する場合は、蛍光が保たれる場合もありますが、蛍光分子の物性によって挙動はさまざまです。一方アルコールや界面活性剤などにより膜透過処理を行うと、蛍光強度の低下や細胞内での局在に影響することが多くなります。

    一般的には、まず生細胞と固定細胞で結果を比較し、固定による反応性や蛍光強度の低下やアーティファクトについての予備検討後に実験にご使用いただくことをお勧めします。

  • Q 蛍光顕微鏡観察にどのようなディッシュ・プレート・容器を用いれば良いですか?
    A

    一般的な生物用の顕微鏡レンズは、厚さ 0.17 mm のカバーガラスの光学特性を想定して設計されています。(一部のレンズには、ガラスの厚み誤差を補正するための補正環がついているものもあります。)そのため、一般的な倒立型の蛍光顕微鏡を用いる場合は、No.1 または No. 1s と呼ばれるカバーガラス、または同等のガラスを使用するのが適しています。

    培養細胞を蛍光顕微鏡観察する場合、細胞培養用のプラスチック製のプレートの底の中央部がカバーガラスと同様のガラスでできている「ガラスボトムディッシュ」を用いるのが一般的です。同様にガラスボトムのマルチウェルプレートなども使用可能です。使用される場合は、顕微鏡にそれらのプレートなどが設置できるアタッチメントがあることもご確認ください。

     

    近年ではプラスチックでもガラスと同じ屈折率、光学的な均質さを実現した顕微鏡観察用のプラスチックボトムのディッシュやマルチウェルプレートも販売されています。これらの素材はガラスと同様に自家蛍光が少なく、蛍光観察が可能になっています。

    一方、一般に細胞培養などに使用される培養用ディッシュ(培養皿)やフラスコには自家蛍光があったり、または光学的に均質でない素材からできているものなどがあるため、ほとんどの場合、蛍光顕微鏡での観察に適しません。ご注意ください。

  • Q 蛍光プローブを投与した細胞を蛍光顕微鏡で観察する前に、溶液交換は必要ですか?
    A

    目的の物質と反応する前はほとんど蛍光を発しない高性能の蛍光プローブの場合、余分なプローブを洗浄するための溶液交換は必ずしも必要ではありません。培地中に未反応で無蛍光のプローブが存在した状態でシグナルのみを検出できます。ただし、細胞培養用培地に含まれる蛍光物質を除去するために溶液交換が必要になる場合があります。培地中の成分のうち、特にフェノールレッドは蛍光が強いため、観察を妨げることがあります(下図参照)。フェノールレッドの蛍光が観察を妨げる場合、フェノールレッド不含の培地を使用することで溶液交換せずに観察ができます。

    溶液条件については、目的の細胞や培地に合わせて予備実験を行った上で決定されることをお勧めします。

     

    それぞれの波長(スリット幅 20 nm)で励起したときのDMEM 培地の蛍光スペクトル。青色光で励起したときに、緑から赤の蛍光が観察されます。

  • Q 蛍光プローブを細胞に添加するとき HBSS などの緩衝液の代わりに細胞培養培地で希釈しても良いですか?
    A

    多くの場合問題ありません。
    特に ROS 検出用プローブの場合、細胞によっては飢餓状態で ROS が増加する場合がありますので、 HBSS などの緩衝液ではなく、細胞培養用培地に蛍光プローブを添加する方が良い場合もあります。ただ、製品によっては培地中の成分が検出に影響を及ぼす場合がありますので、取扱説明書や文献の情報に従ってください。

その他のご質問

  • Q 試薬の分子量、式量、構造式を教えてください
    A

    式量 (formula weight, FW) はご購入いただいた製品のパッケージに記載されています。これは試薬を溶解するために必要な、会合している塩などを含んだものになっており、分子量 (molecular weight) とは異なります。構造式については知的財産権等の関係から原則として開示しておりませんが、一部の製品はプロトコル等に表示しておりますのでご参照ください。

  • Q 冷蔵保管と記載されている試薬を冷凍してしまいました。どうすればよいですか?
    A
    抗体製品以外の製品は、冷凍しても問題ありません。
    (抗体製品は-15℃から-20℃での保管を推奨しています。それ以下の保存温度では反応性が低下する場合があります。
    ご注意ください。)
  • Q 試薬はどうやって注文したらよいですか?
    A

    弊社の販売代理店にご注文ください。販売代理店はリンク先のページでご案内しています。

     

     

  • Q やはり問題が解決しません。
    A

    解決しない場合、製品に関するお問い合わせフォームをご利用ください。