QuicGSH3.0

SSip-1のサルフェン硫黄との反応特性

測定原理について

SSip-1 DAは細胞内サルフェン硫黄を検出できる蛍光プローブです。細胞膜透過性を高めるようジアセチル化されているため、細胞内で分解されることでサルフェン硫黄と反応できる SSip-1 が生成されます。サルフェン硫黄と反応すると、以下のような分子内 FRET の原理で蛍光が増大します (FRET = fluorescence resonance energy transfer)。SSip-1は緑色の蛍光色素FとクエンチャーTの2つのコンポーネントからなる分子です。サルフェン硫黄非存在下では、SSip-1を青色光で励起すると色素Fに吸収された光エネルギーが共鳴効果によりクエンチャーTに吸収され、蛍光はほとんど観察されません。SSip-1がサルフェン硫黄と反応するとクエンチャー Tの構造が変化し、蛍光色素 FからクエンチャーTへの蛍光エネルギー移動が起こりにくくなります。その結果、青色光で励起されたSSip-1は蛍光色素 F由来の緑色の蛍光を発するようになります。

サルフェン硫黄と反応し、構造が変化したクエンチャーTは、還元型グルタチオン (GSH)などにより還元されることで、元の蛍光が弱い構造に戻ります。

以下の反応特性は、細胞内でアセチル基が分解されたものに相当する、ジアセチル化されていない SSip-1 を用いて測定したものです


以下の反応特性は、細胞内でアセチル基が分解されたものに相当する、ジアセチル化されていないSSip-1 を用いて測定したものです。
 

吸収・蛍光スペクトル

図1.SSip-1の吸収スペクトル (左)および蛍光スペクトル (右)
SSip-1 (最終濃度 1 μM, コソルベントとして0.1 % DMSO、添加剤として100 µMGSH、1 mg/mL BSAを含む) を溶解したリン酸バッファー (0.1 M, pH 7.4) に、サルフェン硫黄ドナーであるNa2S4- (最終濃度50 μM) を加えた。得られた溶液の吸収および蛍光スペクトルは、蛍光光度計を使用して測定した。 (励起波長: 470 nm、スリット幅は 2.5 nm) 。

基質特異性

SSip-1は、サルフェン硫黄と反応し、最大蛍光波長が525 nmの蛍光を発しますが、硫化水素のほか、硫黄酸化物やシステイン残基とは反応しません。

 

図2. さまざまな硫黄酸化物、システイン残基および硫化水素、サルフェン硫黄に対するSSip-1 の反応性
SSip-1 のみの蛍光強度を 1.0 としたときの相対蛍光強度
種々の硫黄酸化物、システイン残基、硫化水素ドナー (Na2S)存在下では蛍光増大がほとんど起きませんが、サルフェン硫黄ドナー (Na2S2, Na2S3,Na2S4)存在下でのみ、SSip-1 の顕著な蛍光増大が起こります。

測定条件、および各化合物の濃度

  • 1 μM SSip-1 を 溶解したリン酸バッファー (0.1 M, pH 7.4、添加剤として 1 mg/mL BSA, 5 mM GSH を含む) に各化合物を以下の濃度になるように希釈して反応させた。
  • 励起波長: 470 nm, 蛍光波長: 525 nm。励起、蛍光のスリット幅はそれぞれ 2.5 nm。

GSH: 5 mM GSH
GSSG: 1 mM GSSG
L-Cys: 1 mM L-Cys
L-homo-Cys: 1 mM L-Homo-Cys
Na2S2O3: 100 mM Na2S2O3
Na2SO3: 100 mM Na2SO3
Na2SO4: 100 mM Na2SO4
Na2S: 50 µM Na2S
Na2S2: 50 µM Na2S2
Na2S3: 50 µM Na2S3
Na2S4: 50 µM Na2S4

濃度依存的反応性

SSip-1 は、サルフェン硫黄とモル比で2.5-20倍程度までのNa2S4 濃度で濃度依存的な蛍光増大が見られます。

 

3.Na2S4 の濃度に応じた1 μM SSip-1 の蛍光強度変化 (n=3; S.D.)
(測定方法)Na2S4 は使用直前に 50 mM になるように純水で溶解してから、各濃度になるよう希釈。DMSO に溶解した SSip-1 を 100 mM リン酸バッファー (pH 7.4) に 1 μM となるように希釈して反応させた (最終濃度 0.01% の DMSO, 100μM GSHおよび 1mg/mL BSAを含む)。25℃で1分反応後に蛍光強度を測定。蛍光光度計を使用して計測した。励起波長: 470 nm, 蛍光波長: 525 nm。励起、蛍光のスリット幅はそれぞれ 2.5 nm。

 

可逆的反応性

SSip-1は、サルフェン硫黄と反応し、最大蛍光波長が525 nmの蛍光を発します。この蛍光はGSH存在下で経時的に減弱しますが、再度サルフェン硫黄と反応した場合にも蛍光を発します。

図4.SSip-1 (最終濃度1 μM, コソルベントとして0.1 % DMSOを含む) を溶解したリン酸バッファー(0.1 M, pH 7.4: 添加剤として 1 mg/mL BSA, 5 mM GSH を含む)にサルフェン硫黄ドナーである Na2S4を矢印の部分で 50µMずつ増加するように添加した。470 nm で励起したときの525 nm の蛍光強度の変化は、マイクロプレートリーダーを用いて、25℃ で30秒ごとに測定した。励起、蛍光のスリット幅はそれぞれ 9 nm と 20 nm。

参考文献

D. Ezeriņa, Y. Takano, K. Hanaoka, Y. Urano, T. P. Dick (2018) Cell Chem. Biol.25: 1–13 DOI: 10.1016/j.chembiol.2018.01.011

R. Miyamoto, S. Koike, Y. Takano, N. Shibuya, Y. Kimura, K. Hanaoka, Y. Urano, Y. Ogasawara, H. Kimura (2017)Sci. Rep., 7: 45995 DOI: 10.1038/srep45995

Y. Takano, K. Hanaoka, K. Shimamoto, R. Miyamoto, T. Komatsu, T. Ueno, T. Terai, H. Kimura, T. Nagano, Y. Urano (2017)
Chem. Commun., 53: 1064-1067 DOI: 10.1039/C6CC08372B

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